愛犬と暮らした日々。色々なことがあったのにも関わらず、思い出すのは温かく陽だまりのような暖かさに似た毎日。
柔らかな野芝の上で伏せをして待つ愛犬。
お散歩が大好きで、わたしが選んだ散歩コースはどこに行っても喜び、しっぽフリフリ歩く愛犬。
悪戯をして「誰の仕業なの?!」と叱ると、目を合わそうとせず「ごめんなさい」。しばらくすると、そーっと近づいて反省する。
いつしか、わたしの心の中には愛犬を喜ばせることが自分の幸せになっていました。たとえ外でどんなことがあっても家に帰れば笑顔になれました。
介護が必要な老犬に安楽死という決断をした人の話
いまわたしが住んでいるこは集合住宅です。集合住宅のきまりで、共有部分に出る時犬は抱っこかゲージに入れ無ければなりません。わたしのパートナーは中型犬ですが、20kgもあり抱っこするとだいぶ目立ちます。(でも、抱っこ大好きなので彼は喜んで抱っこされているんですけどね。)
たまたまエレベーターで一緒になった、初老の男性が声を掛けてきました。「かっこいいワンちゃんですねぇ。だいぶ大きいから下に下ろしたらどうですか?わたしは構いませんよ。」
集合住宅にはこの男性のような愛犬家もいれば、犬を見ただけで怪訝な顔をされる方も少数ですがいらっしゃいます。
そのまま少し初老の男性と少し話をしました。
「あたしもね、何年前だっけかなぁ。あぁ、そうだ、20年も経つか・・・以前、倅が犬を拾って来たんですよ。そしてここのマンションで飼ってたの。」
『そのワンちゃん、うちの子と同じ雑種ですか?』
「うん、そう。この子みたいに大きくなってね。何年か経ったら急に吠えるようになってね、近所から”迷惑だ!”って玄関に張り紙されちまった。」
『それで、どうしたんですか?』
・・・わたしは嫌な胸騒ぎがした。
「病院に行ってよぉ、安楽死させちまった。」
わたしは声が出せなかった。生暖かい風がエレベーターホールに流れ込み、少し間をおいてようやく口から出た言葉は『その選択しかなかったんですか?』
「張り紙のことで頭が一杯でよ、慌てて病院に行った。だからもうあたしは犬を飼っちゃいけねぇんだ。」
今から20年前、そんなに簡単に安楽死という選択が出来たのだろうか。その時、唯一の救いが、そのおじいさんが自分にはもう犬を飼う資格がない、と心に刻んでいたこと。
でも、彼はとても辛そうだった。
育てやすくてとても良いワンちゃんだったのに、急に吠えだした。その子はもしかしたら認知症になっていたのかもしれません。そうだとしたら、なおさらワンちゃんと寄り添って他の方法を考えた方が良かった。
おじいさんは、「毎日顔を合わすご近所さんに迷惑をかけている」その罪悪感で、他に対処方法を模索するなんて余裕すらなく、病院に連れて行くことが唯一の免罪符だと思ったのでしょう。
いずれにしても、その選択には賛同できないけど、おじいさんは愛犬を安楽死させてから20年間、ずっと心の中で詫びていたのだ。
愛犬を安楽死させる時に考えておかなくてはいけないこと
先ほどの初老の男性は、残念ながら20年間ずっと後悔の念に駆られていた。
安楽死、それは今の日本では人間に与えられていない権利、選択なので、ある意味犬の特権ともいわれています。
愛犬が癌で食べ物も食べられず、排便も自力で出来ずに苦しんでいる。誇り高き愛犬がその状態をどう思っているだろうか?もしかしたら「もう、終わりにしたい。」と思っているかもしれない。
もし、自分がそうだったら延命治療はしたくない。
以前のわたしだったら、絶対安楽死はダメ、と言っていたかもしれない。
でも、愛犬の苦しむ姿をみるのは本当は辛いのだ。特に長い間一緒に暮らしてきた飼い主さんなら、きっとワンちゃんが何を思って、どうして欲しいのか、分かるでしょう。
だから、いま言えることは「決して後悔しない決断をする」ということ。
世界で一番信頼している飼い主さんの決断なら、「ありがとう」と言って優しく受け入れるでしょう。
まとめ
わたしがまだ実家で暮らしていた頃、祖父が飼っていたジャーマン・シェパードが家にいました。警察犬の訓練を受けただけあって、賢くて勇敢。でも一つだけ欠点がありました。
それは「食いしん坊」だということ。
ある日の散歩中に、ちくわに忍ばされていた毒を食し、血を吐いてのたうち回った結果、最期は衰弱死しました。獣医さんからは安楽死を勧められましたが、祖父が絶対に嫌だ、自宅で看るといって連れて帰りました。
祖父は自分の介護で回復するかもしれない、と思っていたに違いありません。しかし、シェパードは数日間苦しみながら亡くなりました。
祖父は、大事な家族である愛犬を数日間苦しめてしまったことを後悔し、自分を責めていました。
安楽死の決断をしても、しなくても苦しい。
どちらが良いのか、絶対に後悔がないように考えぬいてください。
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